ビジネスウェルネス倶楽部Business Welness Club

背中を見せる営業部門リーダーの底力

ある公開講座で通信・エネルギー関連の現場リーダーであり課長でもあるS氏と出会いました。目線に「営業だね」と思わせてくれる雰囲気があります。なかなかイケメンです。

営業の研修は、提案型と言いながらも現場研修は応酬話法に時間をかけることが多いものです。その結果、「切り返し」なる話法がもてはやされます。

ですが、その講座では「なぜ、お客様はあなたと話をしたがらないのか?」という切り口から入りました。

彼の口元が「ニヤリ」と。そこからは、web情報の考え方にはじまり、論理的な営業の組み立てや営業手法の話に進んでいきます。受講者の顔に次第に「難しい」という表情が見えてきました。そして、休憩時間へ。

彼はまっすぐに講師の前に。満面の笑みで「こういう話を聞きたかったんです。
ガツガツやる営業研修ではなくて、論理的に組み立てる考え方が欲しかったんです」と一言。「結果を出すことが必然にできる考え方が知りたかったんです」とさらに一言。
部下の若手社員も数名、受講していたようで、こちらの様子を見ています。

彼は 「営業の仕事は、足で稼ぐだけ、電話で稼ぐだけ、という傾向が強く、総合力で組み立てるという考え方ができない者が多いんです。このご時世に。どちらかというと会社に責任はあるのですが。数字目標が動くと、すぐにトーク練習と言いたがります。
それじゃ、お客様のニーズになんて気づくはずがないんです。だいたい、会社の上層部がお客様を見ていないんです。お客様の困っていることに手を伸ばそうとしないんです。親会社の出向者が多いので」

冷静な口調の中に悔しさが見受けられました。

「営業だから知っている『当社のこの商品やサービスに力を入れたら、お客様が喜ぶ、売り上げがあがる』というのを思い切って、会社に対して意見を出そうと思っているんです。どう思います?」と。その表情には、誰かに背中を押して欲しいと言わんばかりの躍動感と強さがありました。

「営業の勘とやらではなく、データとカスタマーマーケティングをしっかりとすれば、意見具申としては不躾ではないと思いますよ」と答えました。

すると「そうですか。では、研修の後半でもそのあたりの話があるということですね。」と。やられた!と思いながらも、営業に必要なロジカルと意見に膨らみをもたせるクリエイティブ思考について説明しました。まぁ、予定通りではあるのですが、熱が思わず入ってしまいました。

腹をくくった強さというのでしょうか。講師に迫る背中を部下に見せながら、したいことを実現するために講師を動かそうとする度量。何があっても意見を出さなければ、という強い意思。今を生き抜くビジネスリーダーの底力を見た気がしました。

彼には自分で決めたビジネスマンとしての方向性+想いがありました。セルフリーダーシップが身に付いているのでしょう。上層部との奮闘を通して、ビジネスキャリアを積んでいくのでしょう。

その日の夕方、早くも彼からメールが届いていました。「上司も上層部も『そんな商品は初めてだからよくわからない』という気持ちが強いんです。今のビジネスは、経験だけではダメだし、初めてを怖がってはいられないんです。
だから自分が背中を見せます」と書かれていました。

カッコよすぎる彼の活躍をいつも遠巻きにみています。講師冥利ですね。